がん患者団体支援機構

過去のお知らせ

公開講演会「口腔がんについて」 質問へのご回答

公開講演会「口腔がんについて」の講演の後に頂きました質問に、吉本世一先生からご回答をいただきましたので掲載をいたします。

質問.1 吉本先生にお伺いしたいのですが、先生のスライドの中の頭頸部がん罹患率の折線グラフで男性が多い理由と男性の80歳以上から罹患者数がガクッと減っている理由はなぜでしょうか?
ご回答 頭頸部では口腔・喉頭・中咽頭・下咽頭の部位において、喫煙や飲酒が癌の誘因になります。もともと喫煙や飲酒を嗜む方は女性より男性の方が多いので、頭頸部全体で男性が多い理由になっていると思われます。ただし、男性の平均寿命は80歳くらいですので、80歳を超える方はもともとの数が多くありません。したがいまして、頭頸部癌を罹患する方の数も少なくなります。
質問.2 頭頚部の専門医がいる事で、安心して治療を受ける事が出来ますが、多くは口腔内の違和感から歯科や耳鼻咽喉科を受診するケースになると思います。そこから専門医への紹介はスムーズに行われるのでしょうか。
ご回答 ご承知のように癌の患者さんをなるべく早期に発見することは非常に重要ですが、時に誰が診察しても、しばらく経過をみてみないと判断できないような場合もよくあります。しかしながら一旦癌が疑われますと、専門医への紹介はスムーズに行われていると思われます。
質問.3 5年3ヶ月前に右側頬粘膜がんを手術し2ヶ月半入院後、退院して30回の患部への放射線照射とTS-1抗がん剤治療しました。その副作用で手術痕等が瘢痕拘縮と右側顔面に繊維質が発生し、口が開かなくなり現在、開口度が5mmしかありません。開口度を20mmに広げる方法は何かあるでしょうか?口内炎も放射線治療後に酷く、我慢して開口訓練をしても拘縮する速さが大きいので、手術等で何とかならないか考えています。
ご回答 手術と放射線治療が両方行われた後は、一旦開口障害が起きると、なかなか改善は難しいです。手術を行うことで開口障害の改善の余地があるかどうかは、現在の状況に依りますので、主治医の先生とよく相談してください。
質問.4 3月2日の国立がん研究センターのプレスリリース(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2022/0302/index.html )にあるように、術後再発リスクの高い頭頚部がん患者を対象に従来の標準治療に対してシスプラチンを減量し3週毎を毎週にした治療のことがありましたが、ここにある術後再発リストの高いがんの部位は今日のお話の中のどの部分なのでしょうか?
ご回答 術後再発リスクが高い癌とは、特定の部位ではなく、原発巣の切除断端陽性(切除した断端まで癌が認められている)もしくは頸部リンパ節の節外浸潤陽性(リンパ節の被膜の外まで癌が認められている)を示した癌のことです。私の講演の中で触れずことができず、申し訳ありませんでした。
質問.5 頭頸部の患者会に、求めていることはありますか?
ご回答 (回答)患者会が、病に苦しむ患者さんのかなり近くまで寄り添ってくれて、医療者にとっても本当にありがたい存在となっています。患者さんが大変な治療を乗り切った後も、実際にどのような生活をされているかを患者会が発信することは、きわめて重要です。また患者さんによっては、会にただ参加するだけでなく、周りの方の力になることで、ご自分自身の人生の意義を深める方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしながらあまり理想を突き進み過ぎると際限がなくなるかもしれず、どうか格式ばらず自由で風通しのよい会にしていただければと思います。私が望むのはそんなところですが、本当に患者会の皆様には心より感謝しております。
質問.6 夫が舌癌で半分を切除、再建しました。術後と半年も経つと色々と食べられていたのですが、肺に転移が見つかってからまた食べられなくなりました。痰もあるようです。回復にむけ、やった方がよいことがあれば知りたいです。
ご回答 (回答)肺に転移があるとのことですが、どれくらいの大きさでどういう治療を受け、現在どのような症状があるのでしょうか。一般的には肺活量が落ちますと、咳き込む力が弱くなります。そうなりますと、食事の際にわずかなムセ(気管への垂れ込み)があっても、強い咳で押し返すことができなくなり、むせることが多くなります。食事はトロミをつけ、ゆっくり少量ずつとってみてはいかがでしょうか。食事の途中でわざと強く咳き込んで、ムセを防止する方法もあります。また普段から声を出して本を読んだり、歌を歌ったりするのも、飲み込みの良い練習になります。栄養が十分取れなくなり体重が減ると、再建した皮弁も萎縮して、一層飲み込む力が落ちることもあります。その際には栄養剤を処方してもらい、栄養剤を食事の中心にして、まずは体重減少を食い止めることも重要と思います。
質問.7 口腔がんのように 数が少なく、治療も難しいがんに立ち向かう時の、先生のお気持ちの持ち方
ご回答 (回答)講義でお話しましたように、口腔がんは実は頭頸部がんではもっとも多い部位でもあり、世界的には決して稀ながんではありません。治療ガイドラインもかなり確立しておりますので、治療方針の決定に迷うことはあまりないと言えると思います。仮にもっと希少な癌の場合ですが、それでも関連する論文を集め、患者さんとよく相談し、お一人お一人に応じた治療を模索していくしかないと思っております。いずれにせよ患者さんが納得して治療を受けていただくことが最重要と考えております。